空き家と不動産相続の問題解決のために

親御さんがお亡くなりになり、所有していた自宅などの不動産を相続することになるのだけれど、不動産を含む遺産を相続人の間で円滑に分けるにはどうしたらいいのだろうか?また、不動産をだれが相続するかは決まったけれど、名義の変更などはどうしたらいいのだろうか?さらには、親が住んでいた空き家を相続したけれど、今後、その空き家をどうしたらいいのだろうか―――不動産を相続するにあたって、相続された方のお悩みは多岐にわたります。

不動産の相続の流れ

被相続人の死去

相続人間による遺産分割協議により各相続人が相続する財産を決定
相続する不動産の名義を被相続人から相続人に変更
Q1
財産額の大きい不動産を相続人間でうまく「分ける」には?
A1

被相続人の方が亡くなり、相続人の方々の間で遺産分割を行うにあたっては、不動産だけではなく、現金や預貯金、有価証券、自動車、宝石など、さまざまな種類の財産をそれぞれの相続人の方に分けることになります。他の財産と合わせて遺産分割を行う際には、不動産という財産の以下の特徴を理解しておくことが大事です。

①他の財産に比べて単位当たりの金額が大きい

不動産の場合、土地1筆、建物1棟など、「1つ」でもその価額は数百万円、数千万円となり、他の財産と比較しますと1単位当たりの額が大きくなります。そのため、財産を分けるにあたって、「不動産をどのように分けるか」が問題となるケースが多くあります。

②物理的に分割することが難しいケースもある

一般的な戸建住宅(土地と建物)を考えてみましょう。建物はすでに老朽化しているため取り壊すとして、更地となった土地を相続人2人で分けるとしても、2分割すると小さすぎて、何にも使えない大きさになってしまうかもしれません。そうなると、その戸建住宅は相続人の一人が相続して、あとは他の財産で調整する必要があります。

③いったん共有にしてしまうと「動かしづらく」なる

不動産を複数の相続人で相続する方法として、相続人それぞれが持分を持つ「共有」という方法もあります。例えば、3人の相続人が、1筆の土地についてそれぞれ3分の1ずつの持分を所有する、という方法です。物理的分割が困難な不動産を容易に分けることができるいい方法のように見えます。しかし、いざ不動産を売却したりする場合、共有者全員の同意が必要となり、一人でも同意しない共有者がいますと売却ができなくなります。このように、共有不動産は権利移動などについて「動かしづらく」なり、有効活用等が困難となります。そして、そのまま放置が進みますと、さらに次の代への相続が発生し、共有者の数が増え、ますます「動かしづらく」なってしまいます。有効活用という点からも、不動産の共有は避けたいものです。

これらの特徴を踏まえ、不動産を含む相続財産の分割を行うわけですが、分割を円滑に行うために、不動産に対しては以下のような分割方法をとることが考えられます。

  • 可能であれば、土地の分筆など物理的に分割してそれぞれの相続人が相続する
  • 分割できない不動産を1人の相続人が単独で相続し、その不動産を相続した相続人が、他の相続人に金銭(代償金)を支払うことによって、相続人全員が納得する分割を実現する
  • 売却し、現金化して各相続人に分割する(換価分割)

これらの分割方法を適切に行うためには、分割を行う不動産の時価額が正確に把握できないとうまくいきません。例えば、1筆の土地を3人の相続人で分割する場合、3人のうちの1人が土地を単独で相続し、他の2人の相続人に代償金を支払うとなりますと、その土地の正確な時価が把握できませんと、支払う代償金を決められません。また、物理的に分割する場合でも、角地である場合などは、等しい面積に分割すればそれぞれ同じ価値になる、というわけでもありません。

不動産の時価を把握するにあたっては、土地であれば公示価格や相続税路線価を参考にして把握することもある程度は可能です。しかし、建物価値の把握、さらには、土地についても形状や前面道路の状況など、その土地独自の要因を反映させるためには、不動産鑑定士による評価が有用です。先ほどの角地の場合でも、同じ面積ではなく、「同じ価値」で分割するためには、やはり不動産鑑定士による評価が役に立ちます。

不動産鑑定士による評価といいますと、不動産鑑定評価書が思い浮かびますが、不動産鑑定評価書は、決められた手続きにのっとって作成され、不動産鑑定士に支払う報酬も数十万円となることが一般的です。

相続に関すること、あるいは賃料に関することなど、不動産をめぐってトラブルとなり、訴訟にまで発展してしまった場合は不動産鑑定評価書が必要になるケースもありますが、依頼者の方が自身の判断基準とするために、あるいは相続人間での分割に際しての判断基準とするために用いる場合は、不動産鑑定評価書に比較して内容も簡略化され、作成に当たっての報酬額も低めの評価書(「簡易鑑定書」、「不動産調査書」、「不動産査定書」などと呼ばれます)で十分でしょう。

Q2
不動産の名義の書き換えはどうするのか(所有権移転登記)?
A2

相続人の間での遺産分割協議がまとまり、不動産を相続する相続人も決まったら、次はその不動産の登記名義を被相続人から相続人に移す手続き、所有権移転登記(いわゆる「名義の書き換え」)です。

相続登記についてはいついつまでに申請しなければならないという義務はありません。しかし、名義を変えずに放置してしまいますと、代替わりでさらに相続人が増えてしまい、遺産分割協議がさらにまとまりにくくなります。また、遺産分割協議がまとまったのに、名義を亡くなった人のままにしておくと、他の相続人の持分に債権者から差押えされるリスクもあります。早い段階で相続登記を行うことが望ましいでしょう。

相続による所有権移転登記は、所有権を取得する人からの単独申請になりますので、添付書類が非常に厳格です。登記手続きについては、以下の書類を用意して法務局に申請することになります。相続人の方自身で手続きを行うことも可能ですし、司法書士に手続きの代行を依頼することもできます。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 両親の出生から死亡までの戸籍謄本(兄弟相続の場合)
  • 被相続人の除票(または戸籍の附票)
  • 相続人の戸籍謄本
  • 相続人の住民票
  • 固定資産評価証明書
  • 相続関係説明図
  • 相続人の印鑑証明書(遺産分割の場合)
  • 遺産分割協議書(遺産分割の場合)
  • 遺言書、検認調書(遺言による相続の場合)

所有権移転登記を行うに際しては、登記の際に係る税金である登録免許税を支払う必要があります。登録免許税は不動産の固定資産税評価額に税率を掛けて計算します。 税率は相続の場合0.4%ですが、相続により土地を取得した個人が登記をしないで死亡した場合などについては、2021年3月末までの免税措置が設けられています。また、司法書士に手続きの代行を依頼する場合には、司法書士に報酬を支払う必要があります。

ところで、被相続人の方が亡くなってから、相続人間の話し合いが長引いてすぐにはまとまりそうにない場合、いったん法定相続分(共有)で相続登記を行い、その後、話し合いがまとまった段階で再度登記を行う場合があります。この場合、いずれの登記にも登録免許税がかかってしまいますので、税金、報酬への支出を二重にかけないためにも、できれば登記手続きは一度で終わらせたほうがよいでしょう。

Q3
相続税支払いの要否は、どのように判断するのか?
A3

相続が発生したときに、相続される方が最も気にするのは、やはり「相続税の支払い」についてではないでしょうか。支払わなければいけないのかどうなのか、また、払うとしたらいくら支払わなければいけないのか ――― 大変気になるところです。

相続税は、相続または遺贈によって取得した財産に係る税金で、国税です。相続税のかかる財産は、現金、預金、不動産などの本来の相続財産のほかに、生命保険金や退職手当金など、相続、遺贈によって取得したものではないものの、実質的には同じ経済効果がある財産である「みなし相続財産」があります。ただし、生命保険金等、退職手当金等は、それぞれ500万円×法定相続人の数までの額については非課税となります。

相続税支払いの要否を判断するには、まず、課税価格の合計額を求めます。課税価格の合計額(A)は以下の式に基づいて求めます。

(A)=(B)+(C)-(D)+(E)-(F)+(G)

(B)本来の相続財産  
(C)みなし相続財産
(D)非課税財産
(E)相続時精算課税選択後の贈与財産合計額
(F)債務(税金が含まれる)・葬儀費用(香典返しは含まれない)
(G)3年以内の贈与財産(基礎控除(110万円)前の額)

課税価額の合計額を求めたら、そこから基礎控除額を差し引き、課税遺産総額を求めます。基礎控除額は3,000万円+600万円×法定相続人の数となり、法定相続人の数については、相続を放棄した人も含みます。また、養子については実子がない場合2人、ある場合は1人まで(特別養子、連れ子養子など除く)となります。求めた課税遺産総額がゼロ以下であれば、相続税はかかりません。

相続税についての個別具体的な内容につきましては、税理士さんなどの専門家の方に必ず確認するようにしてください。

Q4
相続税の支払い額は、どのように計算するのか?
A4

課税遺産総額がプラスとなった場合、まずは課税遺産総額を、法定相続分どおりに分けた場合の相続税総額を求めます。相続税総額は、各相続人の相続税額の合計となります。続いて、相続税総額を、実際の相続割合に基づいて各人に配分し、各人の相続税額から、加算、控除を行って、実際の納付税額を求めます。加算は、1親等の親族(被相続人と養子縁組した被相続人の孫のうち、代襲相続人でない孫を除く)または配偶者以外の場合の相続税額は20%割増されますので、これを加算します。控除には、配偶者の税額軽減、贈与税額控除、未成年者控除などがあります。  

相続税についての個別具体的な内容についましては、税理士さんなどの専門家の方に必ず確認するようにしてください。

Q5
空き家を相続したけれど、今後どうしたらよいだろうか?
A5

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